文章が苦手な人へ。たったひとつのシンプルな『リレー作文』という考え方。
バターねこ「『私は今日、危うく遅刻をするところだった』」
ヒカリ「そうですか」
ユウ「普段からきちんとした生活リズムを維持していない証拠ね。あなたは本当に自分に甘いところがあるから」
ヒカリ「だめですよ先輩。朝弱いとかいう人に限ってただ夜寝るのが遅かったりするだけですから。それはまぎれもなく自業自得です」
バターねこ「ちょっと待って」
ユウ「なにかしら?」
バターねこ「え? リレー作文するんじゃないの? ユウが言ったんだよね? 文を書く内容に悩んだらリレー作文風に考えるのがいいわ、やってみましょう、って」
ユウ「そうね」
バターねこ「だから一文目考えたんだけど?」
ヒカリ「なんだ、もう始まってたんですね」
ユウ「突然何を言い出したかと思ったらそういうことだったの。じゃあ次は私ね」
バターねこ「好き放題言ってんな......」
不足を補う、という考え方
ユウ「いい? ヒカリ。このときの動きとしては前の一文に対して語られていない不足を考えるの」
ヒカリ「語られていない不足、ですか」
ユウ「そうよ。まずわかりやすいところで言えば、この一文目の中には、理由と場所の描写が抜けているわ」
ヒカリ「たしかに」
バターねこ「テキトーに考えたけど、いつ、誰が、何を、どのようにってのは入ってるんだよな。5W1Hってやつのうち」
ユウ「だから次の一文はこの理由か場所について書けばいいの」
ユウ「『高校へ向かう途中、倒れている人をみつけてしまったからだ』というふうにね」
ヒカリ「なるほど。それなら両方説明がされていますね」
バターねこ「でもみつけたってだけなら、遅刻する直接の理由にはならないよな? それはいいのか?」
ユウ「それにも実は意味があるの」
話の核はどこか
ユウ「今の一文は理由の話にしたけど、繋げる文次第では全く別の話題にすることもできるわ」
バターねこ「別の話題?」
ユウ「例えば『私』についての説明をするなら、次の一文は『これは私の悪い癖だ』とか『今朝はどうも職場に行く気力が起きなかった』となるわ」
ヒカリ「つまり、そのあとからは『私』か『職場』についての話が始まるんですね」
バターねこ「なんかパラレルワールド的だな」
ユウ「まあ、そんな感じよ。あなたの何のひねりもない文でもその後は無限の可能性を秘めてるってこと。その中から最も書きたい一文を拾い上げるのよ」
バターねこ「めっちゃいいこと言ってるけど、さらっとディスったよね? いま」
内容が尽きることはない
ユウ「つまりこのリレー作文的発想というのは話の展開を考えていく上でとても役に立つものなの」
ヒカリ「そう思ってみるとたしかにどんどん次の文が湧いてくる気がします」
ユウ「まあ、実際はそれだけで文が上手くなるほど簡単な話ではないけど。あくまで考え方のひとつ、という感じね」
バターねこ「少なくともそれで手が止まることはなくなるわけだ」
ユウ「そうよ。これであなたも『内容がないよう!』なんて言わなくてよくなるのよ」
バターねこ「つまんな、それ。言ったことないわ。そんなつまんないこと」
バターねこ「んで、ユウは結局どれにするんだ?」
ユウ「そうね。実に悩ましいけど、『朝起きたら、お腹が痛かったからだ』。これで決まりね」
バターねこ「もうちょっとマシな世界線あったろ......」
ヒカリ「じゃあ次は私ですね」
事の発端↓